映画

【映画レビュー】MINAMATA(ミナマタ)

【映画レビュー】MINAMATA(ミナマタ)

今まさに時の人となっているジョニーデップが制作主演を務めた映画『MINAMATA ミナマタ』。2018年7月から始まったジョニーデップの個人的な裁判開始に伴い、一悶着あった映画だけに「裁判が決着した今なら」と思い、見てみました!

ジョニーデップ 現在は勝訴したものの、裁判中に出てくるエピソードは、まるで隠遁生活を送るユージンか!?と思うものもあり、少し複雑な心境にもなりました・・・。まぁジョニーの私生活とミナマタの作品は全く別物ですからねぇ。では早速、『MINAMATA(ミナマタ)』のレビューをお届けしますね。

『MINAMATA(ミナマタ)』の作品情報

  • 監督:アンドリュー・レヴィタス
  • 脚本:デヴィッド・ケスラー
  • 原案:W.ユージン・スミス/アイリーン M.スミス(写真集『MINAMATA』)
  • 音楽:坂本龍一
  • 上映時間:115分

1971年から1974年の3年間にわたり、水俣で暮らしながら公害に苦しむ人々の日常と、闘いの日々を撮影した写真家で、日本における水俣病の惨事を世界に伝えたアメリカ人のユージン・スミス氏の日本での取材を描いたのが映画『MINAMATA ミナマタ』です。米国人写真家の目を通し、水俣という日本の一地域で起きた公害問題を人間の本質や良心を描き、観客に現在の世界の環境問題にまで目を向けさせる、そんな強い意思を持った作品です。日本では、2021年9月18日に水俣市先行プレミア上映、9月23日に全国公開となりました。

あらすじ

1971年、「ライフ」誌に掲載された数々の「フォトグラフィック・エッセイ」で有名になった、アメリカの写真家W・ユージン・スミスだったが、隠遁者となり過去の栄光にすがり、酒に溺れる日々を送っていた。別の仕事をしていたスミスは、情熱的な日本人翻訳者のアイリーンから、水俣を訪れて水俣病を撮影・記録するよう促される。スミスは、地元の警察や政府の共犯者である企業の貪欲さがもたらす破壊的な影響の正体を暴くために最善を尽くすことをついに確信する。水銀中毒と水俣病による沿岸地域の被害を記録するために、彼は日本の水俣を訪れた。水俣病は、化学会社チッソが引き起こした産業公害が原因であった。ミノルタのカメラだけを持って、強大な企業に立ち向かい世に生み出した写真集『MINAMATA』の物語。

キャスト

W・ユージン・スミス役:ジョニー・デップ

ヤマザキ・ミツオ役:真田広之

アイリーン役:美波

ノジマ・ジュンイチ役:國村隼

キヨシ役:加瀬亮

マツムラ・タツオ役:浅野忠信

マツムラ・マサコ役:岩瀬晶子

ロバート・”ボブ”・ヘイズ役:ビル・ナイ

水俣病とは

レビューの前に、物語のキーとなる水俣病についておさらいです。水俣病は、メチル水銀化合物に汚染された魚介類を長期間かつ、たくさん食べることによって起こった中毒性の中枢神経系疾患です。発生源は、化学工場の工場廃水に含まれていたメチル水銀化合物が海や川に流れ出し、魚介類に蓄積して汚染されていきました。メチル水銀は毒性が強く、血液により脳に運ばれ、やがて人体に著しい障害を与えます。汚染された魚介類は体内で濃縮されたメチル水銀化合物を保有しており、それを地域住民が摂食することによって症状が出ました。

『MINAMATA(ミナマタ)』のレビュー

私が水俣病の知識として持っていたのは、お恥ずかしい話、小学生時代に習った「四大公害病のひとつ」というもの。軽い気持ちで見れる作品ではありませんでしたが、外国人の写真家というフィルターを通して見ても、心に重くのしかかるものを感じた作品です。そして、これは未だに過去の話にはなっていないという現実を突きつけられるものであり、問題提起を投げかける作品でもありました。

作中、特に印象的だったのが、ユージンが水俣のコミュニティに入っていくシーン。ユージン自体も写真家としての意識にいまいち熱が入らず、水俣のコミュニティにおいても”お客様”という状態の中にあるんですが、そんな中で、ユージンが外に出て村の人たちの「なんてことはない普段の生活」をカメラに収めるのですが、自分で思うよりも強い恐怖を感じて驚きました。その画面には、別段恐怖と連動するようなモノがないにも関わらずです。その恐怖の原因は”表裏一体”という部分なんだと気がつきました。街を活性化させている大企業が、海に流す排水によって海が汚染されていく。そして、家族はその大企業で働いていたり、海の恵みをありがたく頂いていたりする。その現実が酷く、恐ろしいもののように見えました。

さらに、私の目に印象的に映ったのは、モノクロームの写真と暗室の赤のコントラストです。これもまた、何かを象徴しているということはないのでしょうが、何故かとても印象的でしたね。海外の方が日本を描くと何か引っ掛かりを感じることが多いのですが、この映画に置いては、その引っ掛かりが少なく感じました。その理由としては、ユージンというアメリカ人の目とカメラを通しているというのが、ちょうどいい感じのフィルターとして作用したのかもしれません。

最後に

「この映画は水俣病も、世界の公害問題も終わっていない、現在進行形なんだとエンターテインメントを通して、気づかせてくれる。それは映画の最後に流れる、世界中の公害や環境問題の写真資料からも伝わります。温暖化をはじめとする環境問題が深刻化し、注目が集まる中、この映画の公開はとてもタイムリーだと思います」と、当時ユージン・スミスさんのパートナーであったアイリーンさんが映画公開後に仰っていました。

明るい気持ちで見終われる作品ではもちろんないですが、日本の、ひいては海外の公害問題に目を向けるきっかけとして、一人でも多くの人が見てくれたらいいなと思う作品です。また、これをきっかけに、公害そのものだけでなく、人間や社会というものを考えてみるのもいいかもしれません。